宝石やジュエリーと一緒に渡される鑑別書。
宝石の詳細なデータが書かれていてお客様の安心感につながることから、多くのお店では鑑別書付きでジュエリーを販売しています。
ですが、そんな鑑別書でも絶対に間違いがないわけではありません。
鑑別機関が間違えて鑑別書を発行してしまう可能性はゼロではないんです。
そんな場合、保証などはどうなるのでしょうか。
詳しくは鑑別書の裏面にほぼ書いてある!!
宝石業に関わる人でも意外と知らない人も多いですが、鑑別書の細かな規約については鑑別書の裏面に詳しく書かれています。
内容は重量の記載についてや鑑別の方法などの鑑別に関する詳細。
そして鑑別書が間違っていた場合や、鑑別発行中に宝石を破損してしまった場合などの補償に関することなどが書かれています。
鑑別書の誤りの補償について、私が手持ちで持っている鑑別書にはこのような内容が書かれています。
鑑別書・レポートの誤りの補償
記載された結果が客観的事実と異なることにより依頼者が財産的損害を被った場合、〇〇は依頼者に対し鑑別・グレーディングに対して〇〇が受領した手数料の金額の範囲内で補償する。
※一部編集して掲載しております。(〇〇は鑑別機関名です)
詳しい内容は鑑別機関によって異なりますが、この鑑別機関で補償してもらえるのは鑑別機関に支払った金額のみになるということですね。
もし手持ちの鑑別書に疑問があった場合は裏面を確認してみてください。
また、販売員さんは一度でいいので読んでみることをオススメします。
読むと鑑別機関との正しい関わり方が見えてきますよ。
このことも後で詳しく記載しますね。
そもそも鑑別書は宝石の価値を断定する物ではない
そもそも、鑑別機関はなぜ鑑別書を発行するのでしょうか。
まず、宝石は見ただけで判断できる物ではありません。
屈折率、光学的性質、などを調べ、科学的根拠をもとに宝石と処理の有無を判断する必要があります。
鑑別機関はそのような宝石を科学的に検査、研究し、公平な流通を助長するために鑑別を行なっているのです。
つまり本来の鑑別目的は価値判断をするものではなく、宝石の売買がしやすくなるように手助けするための補助的な役割なのです。
参考資料みたいなものですね。
だから鑑別書には「これは珍しい色ですよ」とか「〇〇産ルビーの価格は〇〇円です」などの価値判断は書かれていないんですね。
宝石の価値判断は販売する立場の人、そしてお客様がおこなわなくてはなりません。
しかし、最近では鑑別書に書かれている文言だけで宝石の価格が大きく変動するようになっています。
これは鑑別機関の信頼性が上がったとも思えるのですが、それが行き過ぎてしまうと問題も出てきてしまいます。
稀にですが、鑑別機関で天然石だと判断された宝石が、のちに鑑別技術が上がり、再鑑別すると天然石ではなく人工石や処理石だったことが判明し、鑑別結果が変わってしまうことがあるんです。
実際に起こった問題を見てみましょう。
大問題になった表面拡散パパラチアサファイア
サファイアの中でも珍しいパパラチアサファイアという種類はご存知ですか?
オレンジとピンクの中間色で、ハスの花に例えられる希少石です。
このパパラチアサファイアが一時期たくさん出回る時期があり、多くの天然パパラチアサファイアの鑑別が発行されました。
しかし後になって、実はその中の多くは表面拡散処理が行われたパパラチアサファイアだったのです。
表面拡散処理は簡単にいうと宝石に色をつける処理で、表面拡散されたパパラチアサファイアと天然パパラチアサファイアとは希少価値が全く違います。
当時はパパラチアサファイアに表面拡散が行われているという情報が入っておらず、鑑別機関は天然パパラチアサファイアと間違った鑑別を発行してしまったのですね。
高額で仕入れた天然パパラチアサファイアが、実は二束三文の表面拡散パパラチアサファイアだったということで、日本の宝石業界は大混乱になったそうです。
どんな鑑定機関でも、鑑別間違いする可能性はある
このように鑑別書というのはあくまで「今現在の技術で鑑別した結果、恐らく〇〇である」とレポートを出しているに過ぎません。
例えばまだ誰にも知られていない、通常の鑑別では見分けられないような天然ルビーそっくりの合成ルビーを製造することができたとします。
それを鑑別に出した場合どうなるのでしょうか。
場合によっては天然ルビーとして鑑別書が発行される可能性はあります。
もちろん鑑別機関も多くの情報を仕入れていますから、生半可な物ではすぐに偽物と見破ります。
ですが、新しい処理方法は世界中で次々と生み出されている現状を考えると、鑑別書を盲目的に信用するのは本来危険であることがわかります。
鑑別書はあくまで宝石を見る一つの目安で、過信するものではありません。
取り扱う宝石が信用できるものかどうかは、お店が責任を持って判断しなければいけませんね。
そして購入する側のお客様も、お店が信用できるかどうかを見定めなければなりません。
もしトラブルになったら
もし、購入した宝石に付いていた鑑別書が間違っていた場合は、鑑別機関ではなく購入したお店に連絡をするようにしてください。
スムーズに対応してもらうためにも、お店から鑑別機関に確認してもらうようにしましょう。
その後の対応は購入した金額、品物の状態、お店のスタンスによって変わってくるかと思います。
返品出来るかもしれませんし、同等の宝石を探してきてくれるかもしれません。
場合によってはそういった対応を一切してくれないところもあるかもしれません。
誠実なお店で購入したいですよね。
鑑別書だけで購入を検討するのではなく、信頼できるお店かどうかもチェックする
鑑別書の発行は人がおこなっている以上、ミスが発生する可能性はゼロにはなりません。
だからこそ、宝石を購入するときは鑑別書だけで判断するのではなく、信頼できるお店かどうか、しっかりと見定める必要があります。
良いお店はトラブルがあった時でも、しっかりと向き合って対応をしてくれますよ。
販売する側の人間も鑑別書に頼り切りのではなく、宝石を見る目を養い、信頼できる仕入れ先を探し出す力を身につけることが大切だと思います。
信頼できるお店の探し方については後日改めて記事を書こうと思います。