宝石は薬だった?『神農本草経』から読み解く鉱石と健康の関係

宝石といえば「美しいもの」「趣向品」というイメージが強いですが、古代の人々にとってはそれだけではありませんでした。
実は、中国最古の薬学書といわれる『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』には、水晶・翡翠・長石など数多くの宝石や鉱物が“薬”として登場しています。
「宝石を薬として飲むなんて本当?」と驚かれるかもしれませんが、当時は体を癒す効能があると信じられていました。
この記事では、『神農本草経』に記録された宝石とその効能について解説していきます。
中国最古の生薬の教本解説!
神農本草経解説 [ 森由雄 ]神農本草経とは?

中国最古の薬物学(本草学)書であり、個々の生薬の薬効について述べている。中国古代の伝説の帝王で農耕・医薬・商業の神「神農」にその名を託した。一年の日数に合わせた365種の薬物を上品(じょうほん、120種)、中品(ちゅうほん、120種)、下品(げほん、125種)と薬効別に分類している。
https://www.pharm.or.jp/words/post-92.html
この本は「中国最初の生薬の教科書」と言われています。
原本は3世紀頃のものといわれ、残念なことに早い時代に失われてしまっています。現在あるのは復元本なのだそうですよ。
「生薬」は植物の葉、茎、根などや動物、鉱物のなかで薬効があるとされる一部分を加工したもの。その生薬を組み合わせると「漢方」になります。
宝石が薬とされた理由

なぜ宝石は薬として珍重されたのでしょうか。やはり、その輝きや色彩に「生命力」「神秘の力」を感じ取る人が多かったのではないでしょうか。
また、丈夫なことから「不老長寿」に結び付けられたのかもしれません。
中世の錬金術師は宝石には病気を治す力があると考え、粉末状にした宝石を患者に与えたそうです。
元々、装身具として宝石を身につけるのは「宝石の持つ不思議なパワーを自分に宿らす」という意味合いもありました。
宝石の力を体に直接取り入れようと考えたのは自然な流れだったのかもしれませんね。
とはいえ、宝石の薬はとても高価だったため、買えることができるのは裕福な人だけだったそうです。
『神農本草経』に登場する宝石・鉱石

ここからは本に載っている宝石をご紹介していきましょう。
ちなみに、【神農本草経に書かれた効能】はあくまで書かれた当時考えられていた効能です。科学的な根拠は全くないので、真似はしないようにしてくださいね。
翡翠(玉泉・ぎょくせん)

一番最初に書かれているのは「玉泉」と呼ばれる生薬です。
基源は正確には分かってはいませんが、玉(翡翠)を液化したものとされています。
個人的には「翡翠を液化」という部分に非常に興味がありますね。普通だったらありえないことですが、翡翠は削りやすいため、細かくして水に混ぜていたのかもしれません。
【神農本草経に書かれた効能】
「久しく服せは神明に通じ」「老いず」「飢餓せず」「神仙となる」など、不老不死に関する効能が書かれています。
科学的根拠は全くないように見えますが、今でもその面影が石言葉(健康・繁栄)として残っているように感じます。
水晶(白石英・はくせきえい)

透視するための「光の石」として高霊術で使われるなど、水晶は神秘的な力があると信じられてきました。
水晶占いは西洋占星術、古代中国、アメリカ大陸など世界中で行われている占いの王道ですよね。
また、のちに水晶に圧力をかけると電圧が発生する現象が発見され、「ピエゾ電気」と名付けられました。
この特性は時計やスマートフォンにも活用されているそうですよ。
水晶のパワーを信じる人は、この電圧を発生させる特性を無意識に感じているのかもしれませんね。
また、水晶はシリカ(二酸化ケイ素)が結晶化したもの。シリカはアンチエイジングや骨を丈夫にするなどの効果が期待さていて、今でもサプリメントとしても人気があります。
水晶を薬として取り入れていた先人たちは、実は理にかなっていたのかもしれませんね。
【神農本草経に書かれた効能】
様々な効能があるとされる水晶。糖尿病やインポテンツ、呼吸困難などに効くと書かれています。
他にも筋肉が腫れる病気や、リウマチのような疾患にも良いのだそう。
水晶は上薬に属していて、多量に服用したり長期間服用しても人に害を及ぼすことがないとされていました。
孔雀石(曹青・そうせい)

美しい模様と色合いが魅力の孔雀石(マラカイト)は世界中で邪悪な目を追い払い、妊娠・出産のお守りになったと言われています。
また、クレオパトラのアイシャドーとして使われていたのだそうですよ。これは身を飾るだけでなく、虫除けの役割もあったと言います。
ここで書かれている「曹青」は孔雀石の中でも平行層状になっている部分を指しているそうです。
【神農本草経に書かれた効能】
目の痛みを治してくれる、関節の動きをなめらかにする、腹部の腫瘍を治すなど、様々な効能があると書かれています。
紫水晶(紫石英・しせきえい)

ミステリアスな紫色が魅力の紫水晶(アメジスト)。高貴な石としてキリスト教の司教が身につけていました。
また、アメジストの語源はギリシャ語の「酔わない」という意味の“amethystos”が語源で、「身に着けると悪酔いを防ぐ石」と信じられてきました。
【神農本草経に書かれた効能】
心腹に邪気があるために生じた病気を治す。服用すると子宮の邪気を払い、不妊症を治す。
長く服用すれば体を温め、長生きできる。など、女性に嬉しい効能があると考えられていました。
まとめ

『神農本草経』には、翡翠、水晶、紫水晶など、現代ではジュエリーとして親しまれている宝石が“薬”として登場します。
古代の人々は、その美しさや丈夫さに神秘的な力を感じ、不老長寿や病気治療に役立つと信じてきました。
現代では医学的効能は否定されていますが、石言葉やパワーストーン文化にその思想が受け継がれているように思います。
今回読んだのは『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』の復元本をさらに読みやすく書き直されたものでしたが、他にも色んな鉱物が書かれていて非常に興味深い内容でした。
中国最古の生薬の教本解説!
神農本草経解説 [ 森由雄 ]




