「真珠は貝から採れるのに、どうして水に弱いの?」
こんな質問を受けたらあなたなら何と答えますか?
当たり前のことですが、意外とこんな簡単な質問にすぐ返せる販売員は少ないんですよ。
今回はどうして真珠は水に弱いのか、そして真珠の弱点である乾燥や紫外線、真珠の本質についてお伝えいたします。
水に弱い真珠が水の中で成長する理由

実は真珠は貝の中で形成されている間、貝の身の中に埋まっている状態なので海水に触れることはありません。
ですが母貝が死んでしまい真珠が海水に触れてしまうと、そこから真珠が溶解してしまいます。まさに海の藻屑になるわけですね。
真珠を作るためには母貝に真珠の元となる「核」と外套膜の小片(ピース)を入れます。
この作業は貝への移植手術のようなもので、このとき入れた外套膜はどんどん成長し核の周りをすっぽりと包み込みます。これを真珠袋と言います。
この真珠袋の中で母貝は核に0.3ミクロンほどしかない薄い真珠層を少しずつ巻いていきます。2年ほどかけた真珠層はなんと数百枚にもなるそうです。
真珠は母貝に守られて成長し、小さな積み重ねによって魅力的な光沢を生み出しているのですね。
そもそも真珠が水に弱い理由とは

そもそも、どうして真珠は水に弱いと言われるのでしょうか。
真珠の取り扱いについて書かれた本の多くに「手を洗う時は指輪を外しましょう」と書かれています。
ですが誤解している方も多いと思いますが、これは真珠は絶対に濡らしてはいけないという意味ではありません。
正しくは水滴がついている状態を長時間放置すると良くないということです。
真珠層はタンパク質と炭酸カリウムで構成されています。
水滴がついたまま放置すると水分が二酸化炭素や窒素酸化物を吸収し『酸』に変わります。
この『酸』が真珠層を形成する炭酸カリウムを溶解してしまう可能性があります。溶解してしまった真珠は光沢がなくなり白く濁った状態になります。
逆にしっかりと拭き取りさえすればいいので、多少水滴がついてしまっても慌てる必要はありません。
濡れてしまったらその場でしっかりと拭いてあげましょう。
真珠は硬度が低く繊細な宝石なので、使う布はガーゼやセーム革(鹿皮)のような柔らかいものがオススメです。
研磨剤のついていないジュエリークロスでも大丈夫。
逆にティッシュは真珠を傷つける可能性があるので、使わないようにしてくださいね。
真珠は人のお肌、乾燥や紫外線にも注意

湿気に弱い真珠ですが、極端な乾燥も実は良くありません。
極端に乾燥した場所に放置すると真珠層にヒビが入ってしまう場合があります。
宝石店でパールネックレスをディスプレイしている場所に水の入ったコップが置かれています。これは照明の強い店内で真珠が極端に乾燥するのを防ぐためなのです。
そしてもう一つ気をつけなければならないのは紫外線です。
紫外線があたる場所に長時間晒されるとタンパク質が「やけて」黄ばみが出てきます。
黄ばんでも美しい真珠の本質

アンティークの真珠と真新しい真珠を見比べるとどうしてもアンティークの方が黄色く感じてしまいます。
これはアンティークのように長年愛されて使われてきた真珠はより紫外線を浴びていることが多く、黄色く変色しているものが多いというわけです。
ですがアンティークとして扱われるジュエリーは長年、人から愛されてきた本当のジュエリーです。
むしろその黄ばみは重ねてきた歴史を感じさせるものとなっているはずです。
実際、高品質な真珠は黄ばんでも照りが落ちにくいため、黄ばみが趣のある佇まいになります。
もちろん黄ばまないように扱うのが一番ですが、一概にそうだとは言い切れないと私は思っています。
長い年月の中で出来た擦り傷はヨーロッパでは「時間のキス」と呼ぶそうですが、これはきっと太陽が真珠にキスしたと言っていいのではないでしょうか。
まとめ

今回はお客様からの「なぜ貝から生まれた真珠は水に弱いの?」という質問に答えさせていただきました。
真珠は日本人にとって馴染み深く、愛着のある宝石です。
ご家族の方から譲り受けたり、譲ろうと考えていらっしゃるお客様も多いかと思います。
ですが、意外と知らないこともたくさんあるのが真珠です。
基本的な知識やお手入れ方法を学び、お客様にずっと大切に使ってもらえる真珠を提供していきたいですね。